2025年6~7月 Google コアアップデートについて

2025年6~7月 Google コアアップデートについて今回のアップデート動向まとめ:クエリに対しての専門性や体験などをより重視したのではないか全体動向[変動]全体動向:過去1年の中でも大きな変動[変動]アップデート前後比:Weather、Adult、Manga and Animeが特に大きく変動[被リンク動向]ドメインの強さとランキングの関係はダウントレンド[検索結果上の変化]Hostの多様性が進む[検索結果上の変化]AI Overviewの表示動向は変化なし。コアアップデート前に強調スニペットは減少。大きく変動したサイト例や傾向1. 大手FAQサイトの伸長。一方他FAQは大きく動いていない。大手FAQサイトの動向(1):カテゴリ関係なく上昇傾向大手FAQサイトの動向(2):長期ではYMYL領域は大きく伸ばしていない(備考)大手FAQサイトはAI Overviewには採用されにくい傾向2. Wikipediaを除く辞書サイトの減少が確認できる辞書サイト以外の特定サイト配下の辞書コンテンツも下落Wikipediaの動向:上昇幅は小さめ、YMYL領域は動きが少なかった(備考)WikipediaはAI Overviewには採用されやすい3. 記事コンテンツの動向:個人体験が強そうなものが上昇か記事コンテンツ事例ヘルプフルコンテンツアップデート(2023年9月)で下がったサイトが戻り傾向ヘルプフルコンテンツアップデートから戻ったコンテンツの中には改善がなされていないものもある4. 大手ECサイト下落:クエリカテゴリにおいて専門性が見られている可能性クエリカテゴリによって動向に差分あり:Ecommerce and Shoppingは変化なし。Manga and Animeなどは大きく下落。代わりに上昇したサイト群はSNSやUGC、特化サイトなど5. 公共機関ドメインでユーザー行動が悪いと想定される箇所が下落特徴1:pdfなどSPブラウザで確認する際に利便性が悪いものなどが特に減少特徴2:検索結果上での使用感が悪い、意図がずれているものにダウントレンドまとめ:クエリに対しての専門性や体験などを重視かこの分析について

2025年6~7月 Google コアアップデートについて

Google は、2025年6月30日、コアアップデートのリリースを発表しました。ロールアウトは7月17日まで続き、その間、検索結果にはさまざまなクエリで変動が見られました。このレポートは、このコアアップデートについて、日本における日本語の検索結果に、どのようなジャンルで、どのような動きが見られたのかをまとめたものです。 定期的にリリースされるコアアップデートに関して、インターネット上では数多くの情報が出回っていますが、誤解を生むような表現が多く、参考にはならないものが多くあります。誤った情報が過度に拡散されることを防ぐために、JADE では、コアアップデートで何が起こっているかについて、弊社の見解を発表することにしています。この分析は、あくまで JADE が入手した情報に基づくものであり、Google 公式のものではありませんが、少しでも読者の参考になれば嬉しく思います。
前回のコアアップデートは、2025年3月のものでした。それに関する情報は「2025年3月 Google コアアップデートについて」にまとめてあります。
※今回のレポートデータは DemandSphere 社のデータを使用しております。

今回のアップデート動向まとめ:クエリに対しての専門性や体験などをより重視したのではないか

  • 過去のコアアップデートと比較しても大きめな動きとなっていた。直近1年間の中では2024年8月の次に大きな動きとなっている。
  • 検索結果上の表示host数が増加傾向にあり、特定hostの寡占化がやや緩やかになっているような傾向が確認できた。
  • 特徴的な変動動向としては以下のようなものが確認できた。
    • 大手FAQサイトが上昇。
    • Wikipedia以外の辞書サイトのダウントレンド。
    • 個人体験の強そうなサイトの上昇、使い勝手の悪いサイトの下落。
    • 大手ECサイトが特定ジャンルで大きく下落。
    • 公共機関ドメイン(go.jp)で利便性が悪い、意図が異なる部分が下落している。
これらの動向から今回のコアアップデートにおいては、従来のユーザーの利便性はもとより、AIでは抽出しにくい個人の体験や専門性により重きをおいているのではないかと想定される。
 
 

全体動向

全体の変動状況となる。

[変動]全体動向:過去1年の中でも大きな変動

全体の変動は過去のコアアップデートと比較しても大きめな動きとなっていた。直近1年間の中では2024年8月の次に大きな動きが確認できた。
またコアアップデート直後にもやや大きめの動きがありサイトによってはコアアップデートで動いたものの、戻っているサイトなども存在した。
 
クエリカテゴリ別の変動状況を見ても、各カテゴリで大きく動いている。
 

[変動]アップデート前後比:Weather、Adult、Manga and Animeが特に大きく変動

特に大きく動いたカテゴリ(6月25日と7月23日比較)は以下の通りとなった。
上位カテゴリは前回(2025年3月)と同じ顔ぶれとなっているが、変動の値は前回よりも大きくなっている。
  1. Weather
  1. Adult
  1. Manga and Anime
  1. Health
  1. Vehicles
 
 
YMYL領域においてはHealth、Financeが大きめな動きとなっている。

[被リンク動向]ドメインの強さとランキングの関係はダウントレンド

今回のアップデートでは上位ランキングのドメインの強さがやや減少している傾向が確認できた。
ここ1年間で続いているトレンドではあるが、大手サイトが上位になるといったシンプルな構図ではないことが推測される。
※サードパーティーツール ahrefsのデータ(必ずしもGoogleの評価とは一致しない)であることには注意が必要

[検索結果上の変化]Hostの多様性が進む

下記は計測クエリの数と検索結果上に表示されたhostの数となる。
計測クエリの数が変化していない。
一方でコアアップデート内で表示されたhostの数に上昇トレンドが確認できる。これは特定のhostが検索結果を独占する状況がやや緩和された(≒さまざまなサイトが検索結果上で表示されるようになった)ことを意味している。

[検索結果上の変化]AI Overviewの表示動向は変化なし。コアアップデート前に強調スニペットは減少。

AI Overviewの数は一時的にダウントレンドがあったものの、結果として大きな変化はなかった。
強調スニペットの数は期間中に大きな変化はなかったが、コアアップデート前に大きなダウントレンドが確認できる。
 
AI Overviewの内訳を確認すると下記のとおりになった。コアアップデート前に一時的にAIO内に表示されるリンク数が増加しているが、コアアップデート期間内に元の数に戻っている。
 
AIOに表示されているサイトに大きな変化は確認できなかった。
 
ジャンルごとに表示されやすいサイトが異なる。こちらも従来の傾向と大きな違いは確認できなかった。
 

大きく変動したサイト例や傾向

今回のアップデートで特徴的だった事例や動向などを紹介する。

1. 大手FAQサイトの伸長。一方他FAQは大きく動いていない。

2024年11月のコアアップデートでFAQサイト全体の伸長が大きかったが、今回のアップデートにおいては大手FAQサイトの大きな伸長が確認された。
 
一方で11月のコアアップデートとは異なり、小規模FAQサイトにおいてはあまり共通した変化が確認できなかった。小規模なサイトにおいては上昇しているものも確認できる。
 

大手FAQサイトの動向(1):カテゴリ関係なく上昇傾向

大手FAQサイトのクエリカテゴリ別動向を確認すると、どのカテゴリでもまんべんなく上昇していることが分かる。
 

大手FAQサイトの動向(2):長期ではYMYL領域は大きく伸ばしていない

その中でYMYL領域においては今回のアップデートで上昇しているものの、長期的に見ると2024年11月のコアアップデートと近いスコアとなっている。
左:YMYL、右:非YMYL
左:YMYL、右:非YMYL
 

(備考)大手FAQサイトはAI Overviewには採用されにくい傾向

なお、大手FAQサイトにおいてはAI Overviewに採用されることが少ない。AI Overviewでカバーしきれない意図を検索結果上で満たしている可能性もある。
大手FAQサイトはAIOにほとんど表示されていない。(データはデスクトップ版Googleから収集)
大手FAQサイトはAIOにほとんど表示されていない。(データはデスクトップ版Googleから収集)
 

2. Wikipediaを除く辞書サイトの減少が確認できる

Wikipediaやや上昇傾向が確認できたものの、その他の辞書サイトにおいては下落している傾向が目立つ傾向にあった。
 
最上位Wikipedia。やや上昇傾向がある。
 
Wikipedia以外の辞書関連サイト。大小あるもののダウントレンドが目立つ。(※一部サービス終了・サイト閉鎖による下落もあり)
 

辞書サイト以外の特定サイト配下の辞書コンテンツも下落

その他、特定サイトの配下に設置された辞書的な立ち位置のコンテンツの下落も確認された。
 
例1)ペットショップ内の図鑑コンテンツ
図鑑コンテンツが下落。詰め込まれているようなテキストが確認される。下記はサイト内の各ディレクトリとなる。
 
 
例2)銀行と公共機関の共同コンテンツ
内容の薄いコンテンツがあり、特にこのサイトではなくとも獲得できる情報が掲載されている。
下記はサイト内の各ディレクトリとなる。サブドメインを使用したコンテンツとなっている。
 
 

Wikipediaの動向:上昇幅は小さめ、YMYL領域は動きが少なかった

Wikipediaをクエリカテゴリ別動向を確認した。特にManga and Animeで上昇が目立つ。
 
前回のコアアップデートで大きく上昇したHealthカテゴリ含むYMYL領域と非YMYL領域を比較すると、今回のコアアップデートではYMYL領域は動きが少なく、非YMYL領域が上昇している傾向にあった。
 

(備考)WikipediaはAI Overviewには採用されやすい

WikipediaはAIOに採用されやすい傾向にある。
WikipediaのAIO掲載数は増加傾向。コアアップデートのタイミングでやや減少するものの、その後元の水準に戻る。(データはデスクトップ版Googleから収集)
WikipediaのAIO掲載数は増加傾向。コアアップデートのタイミングでやや減少するものの、その後元の水準に戻る。(データはデスクトップ版Googleから収集)
 

3. 記事コンテンツの動向:個人体験が強そうなものが上昇か

記事コンテンツを定性的に調査した。
上昇しているサイトは回遊性が高そうなものや個人的体験要素の高いものが確認できた反面、地域差し替えをしただけの中身の薄いコンテンツや、検索集客を目的にしただけのようなコンテンツも確認された。
下落したサイトは回遊性が低そうであったり、広告が多い、読みにくい、内容がゴシップ的なものなどの要素が見えた。
 

記事コンテンツ事例

上昇サイト例)回遊性が高そうだったり、個人的な体験要素が強いもの
SNS寄り要素のあるサイト。具体的な体験に基づいているコンテンツで、回遊性が一定数あると想定される。
 
下落サイト例)記事の文字サイズが小さく読みづらさを感じるサイト
コンテンツは一般的なもののように見えるものの、文字サイズが極度に小さく可読性が悪い。文字サイズそのものはランキング要素ではないが間接的な行動の悪化に繋がったのではないか。
 
 

ヘルプフルコンテンツアップデート(2023年9月)で下がったサイトが戻り傾向

2023年9月のHCUで影響を受けたサイトの群で明確に上昇傾向が確認できた。特に小規模なサイト群で上昇が確認できる。ただし戻った傾向があるものの元の水準に戻っているレベルではなかった。hostの多様化の影響で戻ってきただけの可能性もある。
 
積み上げグラフでURL群を確認したものが下記となる。特に小規模なスコアの群で上昇トレンドが確認できる。
 
URL別に見ると全てのサイトが上昇しているわけではなく、継続的にダウントレンドのものも存在する。
 
上位サイト群を除外したものを見ると各サイトで上昇トレンドが確認できる。
 
上記データからサードパーティーツールahrefsでも同じ傾向が確認できるhostデータをピックアップした。今回のコアアップデートで戻っているものがヘルプフルコンテンツアップデート以前の水準からは程遠いことが分かる。
 

ヘルプフルコンテンツアップデートから戻ったコンテンツの中には改善がなされていないものもある

また上昇したサイトの中にも、個人の体験談などが新たに盛り込まれたり、見せ方を変更するなどコンテンツの改善やリライトが行われていないものも散見される。
そのため一時的に上昇してはいるものの、時間が経過するにつれて再度ダウントレンドとなることも想定される。
 
上昇サイト例)2022年とコンテンツの違いなし
アーカイブを使用して2022年のコンテンツといくつか比較したがコンテンツの違いは確認できなかった。
 
上昇サイト例)2025年3月以降更新停止
トップページの更新日付を見ると2025年3月で停止している。
またサイトの更新日付は刷新されているもののコンテンツの大幅な修正などはなし。一部ユーザーの意見をコンテンツを取り入れているように見えるものの、サイト特有の体験等の記述はなかった。
 
 

4. 大手ECサイト下落:クエリカテゴリにおいて専門性が見られている可能性

大手ECサイトのAとBの下落傾向が確認できた。
 
最上位と2枠目以降いずれもダウントレンド。表示される枠が減っただけではなく、純粋にランキングが下がったものがあることがわかる。
 

クエリカテゴリによって動向に差分あり:Ecommerce and Shoppingは変化なし。Manga and Animeなどは大きく下落。

各サイトを最上位に絞り込んだうえでクエリカテゴリ別の動向を確認してみると、クエリカテゴリによって変動動向が異なることが分かる。
 
Ecommerce and ShoppingやConsumer Electronicsクエリにおいては大きな変化は確認できない。
 
 
一方でLifestyle、Manga and AnimeやGames、Musicなどのクエリにおいてはダウントレンドが確認される。
 

代わりに上昇したサイト群はSNSやUGC、特化サイトなど

特にサイトが大きく下落したカテゴリにおいて特に大きく上昇したサイト群と比較を行うと、各カテゴリにおいてSNS、FAQ、UGC、ジャンル特化の専門サイトなどが上がっていることが分かる。
 
LifestyleではFAQ、SocialやUGCが特に大きく上昇。
大きく上昇したhost例
categoryhost_categories上昇スコア
Lifestyle[FAQサイト]1583195.5
Lifestyle[ハッキングサイト]1559405.5
Lifestyle[Social]1470426
Lifestyle[Social]1428550.5
Lifestyle[Social]1401001.5
Lifestyle[ECサイト,DB]1317988
Lifestyle[Social]1063503
Lifestyle[UGC]967801
Lifestyle[比較サイト]442998.5
Lifestyle[記事メディア]425690
Manga and Animeにおいてもコミックの専門配信サイトやSNS・UGCコンテンツの上昇が目立つ。
大きく上昇したhost例
categoryhost_categories上昇スコア
Manga and Anime[FAQサイト]2358606.5
Manga and Anime[Wiki・辞書]2001517.5
Manga and Anime[Social]1664255
Manga and Anime[DB,配信サイト]1306233
Manga and Anime[DB,配信サイト]1155692.5
Manga and Anime[DB,配信サイト]1093015
Manga and Anime[DB,配信サイト]1083169
Manga and Anime[DB,配信サイト]1002689
Manga and Anime[DB,配信サイト,UGC]822992
Manga and Anime[Social]735474.5
 

5. 公共機関ドメインでユーザー行動が悪いと想定される箇所が下落

2025年3月のコアアップデートでgo.jpドメインに下落傾向が確認できたが、今回のアップデートでもややダウントレンドが確認された。
 
ホスト別に見ると2025年3月同様に厚生労働省(www.mhlw.go.jp)やJ-STAGE(www.jstage.jst.go.jp)、国立がんセンター(www.ncc.go.jp)に特に大きな減少が確認できる。
 

特徴1:pdfなどSPブラウザで確認する際に利便性が悪いものなどが特に減少

厚生労働省とJ-STAGEでpdf関連の減少が確認できた。
 
厚生労働省(www.mhlw.go.jp
全体的なダウントレンドが確認できるものの、最上位(1枠目)でpdf系のコンテンツが特に大きく下落している。権威性は高いものの利便性が悪いことも一因として考えられる。
 
厚生労働省と同じく、最上位(1枠目)でpdf系のコンテンツが特に大きく下落している。一方pdf以外のコンテンツにおいては上昇傾向が確認できる。2枠目以降も同様となる。
 

特徴2:検索結果上での使用感が悪い、意図がずれているものにダウントレンド

国立がんセンターは使用感が悪いものや意図違い・意図のずれにおいてランキング下落が発生していると思われる。
 
国立がんセンター(www.ncc.go.jp)の例
pdf、非pdfに大きな差はなかった。pdfの数が少ないため非pdfの方が大きく減少しているが、いずれも減少傾向にある。
 
クエリベースの確認をしてみると、検索結果上での使用感が悪い、意図がずれているものにダウントレンドが確認できる。
 
例)
「褥瘡とは」9位→47位(pdfコンテンツ)
「大腸がん 原因」4位→13位
 
実際の問題解決のきっかけになるようなサイトが代替して上昇している。
国立がんセンターで獲得できていたクエリを見ると民間の大手サイトが上昇。
 
下位グループで上昇しているサイト。YouTubeや個別の医療施設が上昇していることが確認できる。

まとめ:クエリに対しての専門性や体験などを重視か

  • 過去のコアアップデートと比較しても大きめな動きとなっていた。直近1年間の中では2024年8月の次に大きな動きとなっている。
  • 検索結果上の表示host数が増加傾向にあり、特定hostの寡占化がやや緩やかになっているような傾向が確認できた。
  • 特徴的な変動動向としては以下のようなものが確認できた。
    • 大手FAQサイトが上昇
    • 辞書サイトのダウントレンド
    • 個人体験の強そうなサイトの上昇、使い勝手の悪いサイトの下落
    • 公共ドメインの下落
    • 大手EC下落から見る専門性
これらの動向から今回のコアアップデートにおいては、従来のユーザーの利便性はもとより、AIでは抽出しにくい個人の体験や専門性に重きをおいているのではないかと想定される。
 

この分析について

データについて
  • 各カテゴリでクエリセットを生成し、定常的に一定数のクエリ(十数万種)をモニタリングしています。
  • 順位については日々細やかな変動があります。Google 全体の動きを把握しているわけではなく、正確性を保証するものではありません。単に一部分のクエリをベースにしたトレンドの観測として捉えてください。
表示回数スコアについて
  • クエリにおける順位をベースに、重み付けした数値を合計することで、計測クエリセットにおけるホストの見つけられやすさをスコア化しています。