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2023年8月 Google コアアップデートについて

2023年8月 Google コアアップデートについて前回・2023年3月のコアアップデートについて今回のアップデート動向まとめ全体変動動向カテゴリ(ジャンル)別の動向では3月より小幅なものが多いクエリ全体の動向も小幅な動き今回のアップデートで特に変動したジャンル大きく変動したサイト例や傾向クエリ群で見た特徴的な事例例1)外食関連のクエリ群の上下サイト:付加価値のないサイトの下落が目立つ例2)病院名関連クエリ群の上下サイト:ユーザーの検索行動不良が想定される動き例3)賃貸関連クエリ群の上下サイト:特化サイトでも一般クエリで上昇例4)漫画関連クエリ群の上下サイト:相対的な信頼性などが要因か例5)ファッション関連クエリ群の上下サイト:ハッキング系サイトが多いサイト単位で見た特徴的な事例例1)通販サイトの例:カテゴリによって評価されるページが変化例2)比較サイトの例:相対的に品質の低いページの評価が下がる例3)FAQサイトの例:カテゴリによって異なる動向例4)YMYL × 官公庁サイトの例:Health・Taxでより評価が高まる例5)SNSサイトの動向:YouTubeとTikTokで明暗が分かれる。スパムやそれに準ずるサイト群の動向例1)ハッキングスパムの動向:ccTLDベースのものは減少、別のスパムが登場例2)ディレクトリ貸しサイト:全体では大きな動向はなし。部分的には動きあり。バックリンクの動向(β版):引き続きリンクの評価は高い1. 平均バックリンク数とランキングの関係(カテゴリ別)2. 平均DRとランキングの関係(カテゴリ別)今回のアップデート動向まとめウェブマスターは何を対処すべきなのか?サイト内・競合の動向を注視するアップデート後の施策の向き合い方この分析について

2023年8月 Google コアアップデートについて

Google は、2023年8月22日、コアアップデートのリリースを発表しました。ロールアウトは9月7日まで続き、その間、検索結果にはさまざまなクエリで変動が見られました。このレポートは、このコアアップデートについて、日本における日本語の検索結果に、どのようなジャンルで、どのような動きが見られたのかをまとめたものです。 定期的にリリースされるコアアップデートに関して、インターネット上では数多くの情報が出回っていますが、誤解を生むような表現が多く、参考にはならないものが多くあります。誤った情報が過度に拡散されることを防ぐために、JADE では、コアアップデートで何が起こっているかについて、弊社の見解を発表することにしています。この分析は、あくまで JADE が入手した情報に基づくものであり、Google 公式のものではありませんが、少しでも読者の参考になれば嬉しく思います。
 
前回のコアアップデートは、2023年3月のものでした。それに関する情報は「2023年3月 Google コア アルゴリズム アップデートについて」にまとめてあります。

前回・2023年3月のコアアップデートについて

今回のアップデート動向まとめ

  • 2023年3月のコアアップデートと比較すると変動幅は小さめ。
  • 本質的な価値が低いと評価されたサイト群や、相対的にユーザー体験で負けていることが想定されるサイト群が下落している。
  • 特定のサイトの中でも上がっているページ群と下がっているページ群とで明確に分かれているケースがある。
  • ccTLDを元に算出したハッキングスパムは減少傾向にあるが別のハッキングスパムが増加している。
  • ディレクトリ貸しサイトに関しては、部分的に動いているサイトはあるが全体で大きな動向は確認できなかった。

全体変動動向

1月からの変動動向を確認すると以下の通りとなる。

カテゴリ(ジャンル)別の動向では3月より小幅なものが多い

カテゴリ(ジャンル)にもよるものの全体的に見ると3月のコアアップデートよりもやや小幅な動きになっているカテゴリが多い。アップデート展開直後は動きが少なく、2週目に目立った変動が確認できる。
 

クエリ全体の動向も小幅な動き

カテゴリの制限を設けず全体の動向を確認したものが以下となる。
全体動向で確認しても今回のアップデートは小幅なものであることが確認できる。
 
直近7月にはクエリの意図調整のような変動(※)が起こっていたが、そちらのほうが全体的には大きめの変動となっている。
 
※7月の変動についてはJADEの公式動画で解説されている。
 

今回のアップデートで特に変動したジャンル

アップデートの前後(8/16 vs 9/13)で比較したカテゴリ別の変動は以下。変動したジャンルにおいては次のような順番となった。
  1. Weather
  1. Manga and Anime
  1. Health
  1. Consumer Electronics
  1. Adult
 

大きく変動したサイト例や傾向

今回の変動で大きく動いたサイトの事例を紹介する。

クエリ群で見た特徴的な事例

特定のクエリ群で大きく検索結果上の表示を伸ばしたhost10と、大きく検索結果上の表示を下げたhost10をピックアップして調査を行った。
 

例1)外食関連のクエリ群の上下サイト:付加価値のないサイトの下落が目立つ

  • 大きく伸ばしたサイトは大手店舗検索サイトが多く、順当に伸ばしているというような結果となった。
  • 一方下落したサイトは付加価値のない地図サイトや特定の店舗検索サイトから情報を借りているようなサイトが多く、本質的な価値を持たないサイトが目立った。
  • また7月の非公式アップデートの外食クエリで大きな下落が確認された求人サイトはやや戻し傾向にあった。
 

例2)病院名関連クエリ群の上下サイト:ユーザーの検索行動不良が想定される動き

  • YMYL系のクエリという点もあり変動幅が大きい。
  • 上昇した病院検索サイト、下落した病院検索サイトのページ上の違いは 同タイミングでnoindexを設定したサイトと非モバイルフレンドリーを除けば、基本情報のボリュームが少ない(相対的に付加価値が少ない)、広告過多なサイトとなっており、ユーザーの検索行動不良が考えられる。
  • この中には7月の非公式アップデートで大きく伸ばしたサイトもあったが、サイトに本質的な価値がなかったのか下落が確認されている。
 

例3)賃貸関連クエリ群の上下サイト:特化サイトでも一般クエリで上昇

  • 賃貸関連クエリはアップデートの際にも目立った動きは少なめな傾向にあるものの、今回のアップデートではいくつかの特徴が確認できた。
  • 賃貸の中でも特定のジャンルに特化したサイトが今回のアップデートで上昇傾向が確認された。内訳を見てみると特化したジャンルではなく、一般的なクエリ(◯◯駅 賃貸など)で上昇傾向が確認できた。ユーザーの要望に沿ったサイトであれば特化型のサイトでも一般キーワードで上昇することがあることが確認できる。
  • またアグリゲーション系のサービスでは下落傾向が確認された。
 

例4)漫画関連クエリ群の上下サイト:相対的な信頼性などが要因か

  • 漫画関連クエリにおいては大手の配信サイトや通販サイトが上昇傾向にあった。いずれのサイトでも独占配信作品を除き同じものが読めるケースが考えられるため、そのサイトが悪くなくとも相対的に使われやすいサイトや信頼性の高いサイトなどが好まれる傾向の結果と考えられる。
  • 一方で通販サイトの中でも商品ページと検索結果ページが入れ替わるような傾向も確認できる。(後述)
  • このクエリ群でもっとも下落幅が大きかったのはディレクトリ貸しサイト(漫画のアフィリエイト)だった。
 

例5)ファッション関連クエリ群の上下サイト:ハッキング系サイトが多い

  • EC全般に言える部分だがハッキング系のスパムが多く上下する状態となっている。直近ではccTLDを利用したスパムは減少傾向にあるものの、gTLDなどのハッキングサイトなどもまだ目立つ。
  • こちらの事例では漫画クエリ群と似た動きで比較サイトの検索結果ページが減少しており、通常のページが上昇している傾向にある。これは同じドメイン内でもより品質の高いhostが選定されていることが想定される。(後述)
 

サイト単位で見た特徴的な事例

特定サイトの動向を紹介する。これらの動向から全体的な検索流入の上下だけではなく、特にどこが上がったのか下がったのかを見極めてサイトの改善に取り組むことが重要と考えられる。

例1)通販サイトの例:カテゴリによって評価されるページが変化

ある通販サイトの全体動向。動向を見ると8月のアップデートで上昇している。
このサイトはさまざまなジャンルに特化したページを持っており、内訳を見るとサイト内検索結果ページが上昇傾向にある。
 
カテゴリ別に見ると少し特徴的な動きが確認できる。
顕著な動きが確認できるのがHome and GardenとManga and Animeカテゴリを比較したもの。
Home and Gardenカテゴリではサイト内検索結果ページは上昇傾向にある。
一方でManga and Animeカテゴリではサイト内検索結果ページは下落傾向にあり、代わりに書籍ページが上昇傾向にある。このように同じサイトの中でも、Googleがより適切なページ群を評価しようとしている動きが確認できる。
 

例2)比較サイトの例:相対的に品質の低いページの評価が下がる

ある比較サイトの全体動向。アップデートでややランキングを落としている傾向となった。
 
このサイトは広告の多いページ群と、広告の少ないページ群、その他のページ群が存在する。
これらのページ群を分類して動向を確認してみると検索への表示を大きく落としているのは広告が多いページ群となっており、サイトの中でも相対的に品質が高くない部分が検索結果に表示されにくくなっていることが分かる。
 

例3)FAQサイトの例:カテゴリによって異なる動向

今回のアップデートではFAQサイトでも特徴的な動きが確認できた。特に大きなFAQサイトAは目立った上昇が確認できるが、どのカテゴリでも評価されたわけではなく評価されたジャンルと評価されにくかったジャンルがあることが分かる。
 
サイトAのBusiness and Consumer Services・Shippingカテゴリの動向。元は同じような水準だがBusiness and Consumer Servicesは評価され、Shippingは鈍化傾向にある。
 
 
下記がサイトA以外の動向となるが、こちらもカテゴリ別に見ると様相が異なる。
 
 
一例としてはHealthとComputers Electronics and Technology。質問の種類の多さなどもあるが各々のジャンルで評価が異なり、サイトによっての強いカテゴリが異なることがわかる。
 

例4)YMYL × 官公庁サイトの例:Health・Taxでより評価が高まる

YMYLジャンルに近いHealth、Tax、Finance、Law and Governmentの4つのカテゴリで確認を行ったところ、HealthとTaxで特徴的な動きが確認できた。
前回のアップデートではHealthジャンルで、go.jpドメインに明確な上昇が確認できたが、今回のアップデートではHealth系にgo.jp、ac.jp、www.prefが各々増加傾向、Taxはgo.jpが増加傾向が確認された。
YMYL系ジャンルでは権威性が引き続き強く必要とされる傾向にある。
 
なお、上記の中でもっともスコアの上昇が確認できたのはHealthカテゴリではJ-STAGE(www.jstage.jst.go.jp)で病名クエリ等での上昇が確認できる。Taxカテゴリでは国税庁(www.nta.go.jp)が大きく上昇した。
 

例5)SNSサイトの動向:YouTubeとTikTokで明暗が分かれる。

各SNSの動向は次のとおりとなった。前回の変動で大きく上昇させていたTikTokは下落傾向にあることが確認できる。X(Twitter)はサイト内の要因なども含め長期で下落傾向。
 
また動向とは別にカテゴリによって親和性の高いSNSもある点には注意したい。
例えば下記はFood and DrinkとGamesのSNSのスコアを合算した動向で近い水準に見えるが、内訳を確認してみると大きく異なることが分かる。
 
Food and DrinkはInstagramのスコアが高く、GamesではTwitter、YouTubeのスコアが高い。ユーザーニーズの特性に合わせてSNSも使い分けたい。
 
 

スパムやそれに準ずるサイト群の動向

例1)ハッキングスパムの動向:ccTLDベースのものは減少、別のスパムが登場

前回のアップデート時にはccTLDベースで調査した海外ドメインの配下に発生したハッキングサイトが増加していたが今回のアップデートのタイミングでは大きく減少した。それに伴い順位が改善しているような例も確認できる。
 
一方でこれまでとは異なるgTLD×サブドメイン型のハッキングサイトが散見されるようになった。観測している限りは1週間で消えてしまうような動きが目立ち、一過性となっていることが多い。
 
内訳を確認するとWeahterカテゴリで特に多く発生しており、同カテゴリの変動率を高めている要因の一つでもある。
 
具体的な例(ccTLD以外にもcomなどのgTLDのハッキングサイトが確認できる)
「福島県福島市 天気」
「シール 貼り バイト 在宅」
 
 
なお、観測範囲では既存のccTLDハッキングよりは小規模となっている。
 
こうしたスパムは主には2ページ目以降に表示されるが、ジャンルによっては1ページ目に表示されるようなケースもある。自分のサイトがそうしたサイトに押し出されてランキングが下がっていないかを確認したい。またこのようなケースが確認できた場合にはスパムレポートを使用して通報することを推奨する。
 

例2)ディレクトリ貸しサイト:全体では大きな動向はなし。部分的には動きあり。

昨今、グレーな手法として展開されているディレクトリ貸しサイトについては、サイト群では大きな動きは確認できなかった。
以下は計測しているディレクトリ貸しサイト・約300ホストの累計動向。アップデートのタイミングでは大きな動向はない。
 
全体動向は大きく動いていないが、個別に下落しているサイトも存在した。
 
  • Financeジャンルで動いたサイトA(サービスサイト下にディレクトリ貸しサイトを展開)
サービスサイト下に複数のディレクトリ貸しサイトがある。変動のタイミングで大きく下落している。
 
  • Manga and Anime ジャンルで動いたサイトB(公式サイト下にディレクトリ貸しサイトを展開)
公式サイト下に複数のディレクトリ貸しサイトがある。時期をずらしてそれぞれ下落している。
 
コアアップデート後に展開されたヘルプフルコンテンツアップデート(2023年9月15日展開)ではこのような手法が低品質なコンテンツ例としてピックアップされていた。JADEでは引き続きこうした手法は推奨しない。
 

バックリンクの動向(β版):引き続きリンクの評価は高い

Ahrefs APIを利用してバックリンクのデータ(平均backlinksと平均DR)をホスト単位で紐付け5位刻みでランキングとの関係について確認を行った。
図の左側が前回アップデート終了後のリンクデータ(backlink_230329)、右側が今回のアップデート終了後のリンクデータ(backlink_230913)となる。
※サードパーティーツールのためGoogleの評価しているリンクデータと必ずしも一致するわけではない点に注意が必要。
 

1. 平均バックリンク数とランキングの関係(カテゴリ別)

バックリンク数の平均を比較すると前回のアップデート後よりも単純なhostあたりのリンク数は大きく伸びている。ただし、本数が重要というわけではなく、リンクを獲得している傾向が強いことに着目したい。
 

2. 平均DRとランキングの関係(カテゴリ別)

ahrefsが算出しているDR(host単位で抽出)とランキングの相関を算出した。単純なバックリンク数と比較してこちらは目立って大きな変化はないように見える。リンク数データと単純に比例せず、リンクの質が重要であることがうかがえる。獲得の際には「ユーザーに使われる」「ユーザーに参照される」リンクを獲得したい。
また従来どおり上位サイトはDRが高い傾向にある。
 
あくまでサードパーティツールのデータではあるものの、各ディレクトリで確認してみても上位ほど良いスコアが出ており、バックリンクとランキングについては引き続き重要視されていることがわかる。 当然のことだが、リンク購入はガイドライン違反なので実施しないように注意をし、ユーザーの流入が生まれるようなリンクを獲得することが重要となる。

今回のアップデート動向まとめ

今回のアップデートの動向は以下のようになった。
  • 2023年3月のコアアップデートと比較すると変動幅は小さめ。
  • 本質的な価値が低いと評価されたサイト群や、相対的にユーザー体験で負けていることが想定されるサイト群が下落している。
  • 特定のサイトの中でも上がっているページ群と下がっているページ群とで明確に分かれているケースがある。
  • ccTLDを元に算出したハッキングスパムは減少傾向にあるが別のハッキングスパムが増加している。
  • ディレクトリ貸しサイトに関しては、部分的に動いているサイトはあるが全体で大きな動向は確認できなかった。
 

ウェブマスターは何を対処すべきなのか?

コアアップデートは傾向をつかんで特別な対策をするようなものではないが、一般的にどのような対処をすべきなのかをまとめる。

サイト内・競合の動向を注視する

事例で紹介した通り、サイト内の動向や競合の動向など単純なランキングの上下だけでは見えないことも多い。
そのため以下のようなポイントを観測することが好ましい。
  • 今回のアップデートで評価された点はどの部分か。あるいは評価が下がったのはどの部分か。
  • サイトが他のサイトと比較して相対的に付加価値を出している点はあるか。それがユーザーに伝わっているか。
  • ユーザー行動を妨げている点はないか。
  • 競合と相対的に強い点・弱い点はどこか。
このようなポイントを考えていくことにより、次回のアップデートまでに取り組む方針も作りやすい。

アップデート後の施策の向き合い方

コアアップデートは前回のアップデートから行ってきた施策の答え合わせのようなものなので、良かった場合はこれまでの施策を継続、悪かった場合については施策の見直しを検討していく必要がある。
概要については前回のアップデート後の動画があるので掲載する。
 
 
 

この分析について

データについて
  • 各カテゴリでクエリセットを生成し、定常的に一定数のクエリ(十数万種)をモニタリングしています。
  • 順位については日々細やかな変動があります。Google 全体の動きを把握しているわけではなく、正確性を保証するものではありません。単に一部分のクエリをベースにしたトレンドの観測として捉えてください。
表示回数スコアについて
  • クエリにおける順位をベースに、重み付けした数値を合計することで、計測クエリセットにおけるホストの見つけられやすさをスコア化しています。